神戸市北区にある箱木家住宅は、民家としては日本最古の建築物だそうです。
地元では『千年家』と呼ばれていますが、柱の放射性炭素年代測定によって西暦1300年頃に伐採された材木が使われている事が判明しました。
1977年まで度々の改築を重ねては箱木家の住宅として使用されていましたが、ダム建設工事によって湖に沈む運命となったところを解体移築されて建築当時の姿に復元され、現在は資料館として展示保存されています。
歴史的遺産として現存する城や寺社仏閣を見学して、昔の職人の超絶技巧や美術的細工に感心させられる事は良くあります。
一方、箱木家住宅は鎌倉時代のこの地方では大きく立派な民家であったようですが、権威や富を誇示するような威厳性は全く感じられず、あくまでも実用本位の住宅で、使われている建材は、木、竹、土、茅、藁、と言ったこの近辺で調達出来る素材ばかりです。
箱木家住宅に見る事が出来るのは、昔から住宅に求められて来た原始的な姿。
風雨を凌ぎ日射を避け、夏には涼を求め、冬には暖を取るための居場所。
厳しい自然環境から身を守るための、つまりは『防災』機能。
木や草や土を集めて来ては、人が家を造るようになった頃から『防災』の歴史は始まったのだろうと思います。
装飾的な造形物は何もないが、家の佇まいとしては圧倒されるような存在感である。
木、土、茅、など身近な自然素材を巧みに利用している。
藁を練りこんだ土壁は暖かそうにも見えるし、涼しそうにも見える。
茅葺屋根の裏側。雨は防ぐが、空気は流れる屋根、呼吸する家。
床板は、割った原木から削り出して作っている。板と言えども贅沢品だったようだ。
建築当初から使われている柱。煤がこびりついて化石のように見える。
土間に土で作ったカマド(復元)
天井付近に並べてあるのは、長槍。野盗の襲撃に備える自衛手段。
鎌倉時代にも桜はあったのだろうか? ソメイヨシノは無かっただろうな。